純×恋(じゅんれん)
(今日で終わり,今日で終わり)

何度も唱えて,残り数少ない遥との時間を大切にしようと,純は思った。

けれど



「きいとちゃん?」



気がつけば,目が離れた位置にいる恋に向いてしまう。




「あー,あいつか。ほんと好きだね~」



そんな遥の冗談にも慣れた。

純は遥を見上げる。



「すみません,何の話でしたっけ」



冗談よりも,困ること。



「んー? 今日の昼の学食,きいとちゃんは何食べる? って」



それは,遥との距離がいつも物理的に近くなるということ。

気付けばいつも距離を詰められている。



「直前に見て決めるのが楽しいので,まだ決めてません」

「そうなんだ。きいとちゃんはいつもバラバラだよね。今日は俺のも決めて貰おっかな~」

「そ,れは……いいのですが……」



たったそれだけ言うのに遥は前傾になり,今も純と距離を詰めようとしていた。

純も強く拒否することはなく,両手の平を遥に向けながら,眉を垂らす。

ふと視線を感じてそちらを見ると。

遥の通常のペア,真優が2人を見ていた。

純は肩をびくりと震わせる。

真優は発火しそうなほど情熱的な怒りを,"遥"に向けていた。

(ほんとに気付いてないんでしょうか? 遥くん,大丈夫かな)

それとも上級者の恋の駆け引き?

真優の想いは,純から見ても本物。

遥に話しかける真優の笑顔は,純の目には第一級。

それなのにこんなにも勘違いされそうな行動をしている遥に,純は不安になる。

声をかけず,必死に踏みとどまる真優が不憫でもあった。
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