純×恋(じゅんれん)
今と対比するような,ペア交換前の真優を,純はもう一度思い出す。

遥の机に両手をつき,首を傾げるようにして笑う真優。

より鮮明に思い出そうとした純は,試しに目を閉じてみた。

するとそれがいつかの光景と重なる。

驚いて,純は急いで目を開いた。。

ふと,純の表情が翳る。

(早く,戻ってあげないと……)

時間が指定されている分,そんな事は出来ないけど。

純は切実に,心からそう思った。

重なったのは,遠目じゃ性別も分からないような,赤ん坊を抱く母の顔。

(恋くん…)

そろそろ,お話したいです。

だって約束してくれました。

もうそろそろ,炊き込みご飯,食べたくなります。

寂しい。

その一言をずっと胸の内にしまっていた純は,我慢を隠しきれなくなる。

真優の隣にいるかと顔をあげれば,突然。

後ろから囲い込むように,純は何者かに抱きすくめられた。

ふわりと香った匂いに,純は全身の力が抜けて,抵抗する気も起きない。



「れん,くん……?」



何で,どうして。

ルールを破れば減点が…

信じられない気持ちで肩に乗っかった顔を見つめると,恋はべっと舌を出す。



「ごめん,もーむり」

「私もむり!! 先にルール破ったのそっちだからね! 私達はお咎めなし! …たぶん」



最後に声を萎ませて,真優も恋に続くようにして遥に体ごと突っ込んだ。

(一体何が,起きて…)
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