純×恋(じゅんれん)
「どこに,行くんですか,恋くん」



純が尋ねる。

手を引かれていく先は,明らかに自分達生徒の寮。



「俺達の部屋」



さらりと告げられて,純は戸惑う。



「で,でも! まだ真優さんの私物が…」



はっと純が止まる。

(私達,まだ課題中!)



「俺の個人スペースなら問題ない」



恋はそれをも拒否するように,つんつんと純の手を再び引いて歩き出した。

マイペースな恋に,純も従い歩く。

パタンと着いた時,2人の間に数秒の沈黙が落ちた。

恋が口を開く。



「で。あいつに告られたの?」

「いえ,そんなことは…」



遥との事で,何もなかったとは純も思っていない。

ブザーが鳴ると焦る程,生まれて初めての距離に遥は来た。



「何で,いいよどむ?」



けれど,こてんと嫌そうに首をかしげた恋を見て,純は吹っ切れる。

確かに驚いたけど,そこに疚しさは何もなかった。



「いいえ,やっぱり。何もなかったですよ,恋くん」

「何もされてない?」

「はい」



久しぶりの会話に,純が落ち着いて微笑んだ時。

今度は正面から,苦しい程ぎゅうぎゅうに,純は抱き締められる。

誰って,恋に。

これには流石に驚いて,純も「え…」と声を漏らした。
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