純×恋(じゅんれん)
「あのさ,急で困るかもしんないんけど」

「は,はい」

「きいと,あいつと距離近すぎ。不安すぎて,毎日目,離せなかったし。帰ってくるって分かってても,きいと一緒に暮らすとか,羨ましすぎたし」

「あっあの…」



あわあわと,純は恋を止めた。

情報量が,過多すぎる。

純の中で,恋から供給される砂糖がとっくに飽和していた。



「……わかった。でもやっぱりまず,きいて」



話したいことが一杯あるのだと,恋は言う。

ほぅと息を吐いた恋は,妥協するようでしなかった。

すとんと目の前に座らされた純は,同じく目の前で胡座をかく恋をじっと見つめる。



「前に,この学園に決めた理由,話したと思うんだけど」

「そうですね」



恋の語りは,そんな風にして始まった。



「大本はやっぱり違わないけど。本当は,本当の1番の理由は……」



ーずっと上の中な俺を,1番にしてくれる人に逢いたかった。

恋が純にふわりと笑んで,付け足す。



「そしてそれよりも……モノトーンな人生歩んできた俺が,この子の人生笑顔いっぱいに彩ってあげたいって思えるような,そんな子に逢いたかった。それだけだったんだ」



恋は,すごいも好きも響かない,そんな自分が嫌だった。と言った。

特に深い理由はやっぱり無いのだと。



「だけど今,誰よりも大切に,大事に思える女の子がここにいる」



恋が幸せそうに見ているのは,自分だ。

ようやく気づいた純は,恋の瞳に映る自分が真っ赤であることにまで気付いてしまう。



「れ,ん…くん。長くなってしまっても…いいですか…?」
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