純×恋(じゅんれん)
純の両親が"離婚"したのは,純が中学1年生の時。

最近両親の仲が冷めてきていると感じていたら,そのうちに母親の浮気が発覚した。

母と別れる前,ショックもままならない純に母は言う。



『純,愛してるわ』



と。

けれど,



『でもね,お父さんはもう愛してないの』



とも言った。

だから離婚するのだと。

そして1番最後には,全てを飲み込み切れていない純に



『きいとよりも,お母さんが浮気してしまった相手を愛してる』



と。

だから,純は父親に引き取られた。

悔しそうに涙を流しながら,呪いのようだと純に対面する母に父が怒鳴ったのを,純は忘れない。

が,その父も病で死亡。

色々重なりすぎたのだと,純は勝手に思っている。

病気療養中に父が祖父母の了承を得,遺言に後見人として記載ために,その後純は特に反対もなく,祖父母へと引き取られた。

そうやって過ごす中で,中3の夏。

友達と遊び終わって別れた初めての街で,純は母を見つけた。

自分の母だったその人は,幸せそうに赤ちゃんを抱いていた。

(あれが,『愛してる』)

自分の時を思い返しても,もう純は疲れて思い出せなかった。

たった数年前の事のはずなのに。

愛ってなんだろう,愛したい,愛されたい。あんな風に,家族に愛があげられる人になりたい。

母の最終的な愛が自分に向けられなかった現実を前にしても,純は願った。

だから,将来は絶対結婚したい。

そんな考えを,いつしか持っていた。

ゴールデンカップルになれば即結婚。

子供が欲しい,そして愛を与えあえる家族が欲しい。

確実に自分の願い全てが叶う。

それが,入学を決めた純の全て。



「正直お金も,こんなにでかい会社の社長なんて座もいりませんでした。ここに来るくらいだから,きっと相手の頭もいい。社長については適当に考えて申し訳ないとは思いましたが,選ばれても相手を補佐できるような事さえあればいいなと思っていました」



ただただ必死だった。

祖父母は大好きだけど,純の求めるそれとは性質が違う。

だけど,そのどの考えも,純の中で今は前向きに変わっていた。
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