純×恋(じゅんれん)
1年生最後の課題が終わり,後は2年生になるだけ。

2年生になると出来る,普通科。

3分の1程の夫婦の卵(カップル)がそちらに変えることを既に決めていた。

純達を形容するなら,誰よりも"普通"なペア。

何となく課題をこなして,学力テストも上の中。

真ん中辺りをキープして,お互い無下にはしないけど,その分一切干渉しない。

冷めているといってもいい。

かといってお互い笑わない·会話がないということもなく,熟年夫婦なんて呼ばれて,評価基準にもなる社員SNSに載っている。

そうやって中間で生き残ってきた。

詰まる所,たまに学校の方針で共同作業をする,ただの同居人のような関係だ。

本当にデータから選ばれたのかと,マッチングシステム『デステニー』が正しいのかと疑うほど何もない。

この学園の意義を考えれば,どこのペアよりも向いていないなと純は思っていた。

結婚科としてこの寮に残ること。

それはすなわち,金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)を目指すことを意味している。

中間をキープして来た純達だが,沢山の生徒が転科するともなると,成績はほぼドベ。

どちらもいいださなかったから。

ただそれだけで,純達はこのまま結婚科にいる選択をすることになる。

こんなに適当でいいのかな……

純は結婚したくてここに来た。

もっと言えば愛の意味を知りたくて。

でも,相手はここに入学してきた割りに,金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)には興味が無さそうで。

かといって自分1人頑張るわけでもなく。

何がしたかったんだろう。

最近よく考える。

トップとの差は歴然。

最早この結婚科にいる意味はない。

じゃあ,いつも落ち着いていて欲の見えない彼は,鰻田 恋(うなぎだ れん)くんは何がしたくてここに来たんだろう。

何も知らないことに,純は今更気がついた。
家事は上手く分担され,課題と言う名の恋愛ゲームでは先に口を開いた方の言葉に従った。

話し合いとは,つくづく無縁だったのだ。

ぐるぐると,言葉と現状が回る。

ートントン

そんな風に悩む(きいと)のおでこに,優しいタッチで衝撃が与えられた。
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