純×恋(じゅんれん)
初さん達,楽しそう。

クラスが違うものの,疑似結婚式で関わったりと,話す機会もあった彼女。

とても優しい笑顔を,簡単に浮かべる人だった。

思い出しながら,社員にアップされた写真をまじまじと見る。

ナンバーワンのカップル。

画面の向こう側の写真に写る2人に,添えられた言葉。

コメント欄まで楽しそう。

たまに鮫上くんが青く半笑いな表情を浮かべているけれど,やっぱりそれほど嫌そうでもない。

いいねがいっぱい付けられていて。

信頼,愛情。これだと思った。

ー私は,こうなりたかった。

でも私達は,こんな風になれる程,お互いをまだ知らない。

純は写真に写る2人を繋げるように指でなぞり,そう痛感する。



『1人じゃ,絶対に夫婦(カップル)にはなれない』



いつか,初が1人の男子に言い放った言葉。

共感し,感動し。

愛の意味を探し,求める純と彼女とでは,少し似ているような気すらした。

それなのに,この差は。

純はがくりと項垂れる。

(私,この言葉を……本当の意味で理解してはいなかったんだ)

唇をきゅっと噛む。

それでは足りなくて,更に目もぎゅっと閉じた。



「……きいと?」


柔らかく,困惑した声に自分の名が呼ばれる。

その声を聞いて,純はゆっくりと頭をあげた。
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