純×恋(じゅんれん)
(俺は…)

深く考えている間も,純は恋から目を離さない。

それを確認して,恋は息を深く吐きながら,これまでの経緯を吐露した。



「俺は,昔から人より少し頭が良かった。人より少しモテた。でも絶対に1番上にはいけない,ずっとそんな人生だった。ただ平凡なのよりもつまらないと思っていたし,高校は正直どこでもよかった。選び放題で,だけど特に行きたい場所があるわけでもない」



恋が一風変わったニュースを昼間に見たのは,そんな時だった。



「だらけてニュースを見ている時に知って,母親に『頭いいんだし,行ってみたらどう? 少しは新鮮で楽しめるんじゃない?』って言われたから興味をもって。ゴールデンカップルにはなれなくても,被験者として実験に関わっていれば,この大企業の面接も通りやすくなるかもしれない。そう思った」



流石は母親。

暇そうにしている自分をよく理解し,こんな難関高,しかも私立を平気で薦めてくる。

楽しくない毎日で,多少新鮮味を味わえるかも。将来が多少安定かも。

恋はかもばっかりで入学した。



「だから3年間,俺は形だけでも結婚科にいたいと思ってる。だから……解消されると,困る」



言い終えてから,恋は自分の事しか考えていないことに気がつき,慌てて



「うそ。出来ればって話」



と言い直す。

その間,純はじっと黙って聞いていた。

健康的な色をした,形のいい唇がパカリと開かれる。
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