勇者の幼なじみ
 私は体にシーツを巻きつけて、ベッドに座ると、セフィルが後ろに回って、私を脚の間に座らせた。

(あれれ? この体勢はなんだろう?)
  
 後ろから抱っこされ、ドキドキしながら、受け取った手紙を読み始めた。

 ――――愛するファラへ

  元気か?
  早くファラのもとに帰るために
  さっさと魔王を倒したのに、
  俺はまだ王宮に留められている。
  でも、もうすぐ帰れるはずだ。
  帰ったら、約束どおり結婚しよう。
  ちゃんと約束を覚えてるか?
  早くファラに会いたい。
  その可愛い顔を見たい。
  疲れた俺にハグしてほしい。
  圧倒的にファラが足りない。
  できれば、王宮宛てに返事を
  くれたら、うれしい。

      君が恋しくてたまらない
           セフィルより


 冒頭から目が飛び出した。
 目を擦って、読み違いじゃないかと疑う。

「愛するって……。これ本当にセフィルが書いたの?」
「当たり前だ、バカ。俺の字だろ?」

 セフィルの言う通り、見慣れた彼の流麗な文字だけど、中身はまったく見慣れない言葉ばかりだ。

「え、えぇー、もしかして、セフィルって、私のことが好きなの⁉」
「今さらなに言ってるんだ、バカ。そうじゃなきゃ、もらってやるなんて言うわけないだろ!」
「同情かと思ってた」
「ふざけんな、バカ! 好きに決まってるだろ!」

 思わず口にした言葉に、セフィルが真っ赤になった。

「好き?」
「もう言うかよ!」

 ぷいっと横を向いてしまったセフィルだったけど、耳まで赤くなっていて、私は彼に抱きついた。
 
(セフィルが私を好き?)
  
 信じられない幸せに涙ぐんだ。

「お前のほうこそ、どうなんだよ?」

 ぼそりとセフィルが言った。

「どうって?」
「一度も好きだって言ってくれないじゃないか……」

 拗ねたようにつぶやく彼の顔を覗き込む。

「好きよ。好きに決まってる! ずっと好きだったの! 迷惑かと思ってた」

 そう言うと、ぱあっと顔を輝かせたセフィルが唇を寄せてきた。

「バカだな。迷惑なわけないだろ!」

 私たちは目を合わせ、もう一度キスをした。
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