世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 2人がフレンチトーストを食べ終わった頃に、柿本が玄関ドアを開けて「お客様が来られています。依田陽貴様です」と告げた。
 結花は名前を聞いた瞬間、すっと立ち上がってペンギンのようなポーズで玄関ドアに向かう。
 ドアを開けると黒スーツ姿での陽貴がいた。
「朝早くからすみません。悠真のことで少しお話をしたくて」
 営業スマイルで言われた結花は車庫にいる柿本に「柿本さーんスリッパ用意してー。恥かかせるような真似しないで」と大声で言う。
 柿本はすっと戻ってきて、陽貴のために来客用スリッパを用意した。
「あぁ、これはお手数おかけします」
 柿本はスリッパを用意した後、ダイニングに案内する。
「さぁ、行きましょ」と結花は陽貴の腕を組もうとするが、すっとよけられた。
「どうしたんですかー。こんな早くからー。もー化粧も服も完璧じゃないのにっ! 恥ずかし!」
 恋する乙女のように赤らめて、陽貴に上目遣いするが無視をされる。
「どうぞ、こちらお座りください。今お茶用意しますからね」
 上座に案内された陽貴は「いえ、結構です」と断った。
「あら、確かあの人の……」
 結花はすかさず「あの人の1番上の兄」と周子に耳打ちする。
「どうもお久しぶりです。悠真の兄、依田陽貴です」
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