世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 病室の廊下には、ネイビーのポロシャツとパンツを履いた清掃員達や、赤のナースジャケットとパンツスタイルで白のナースシューズを履いた職員達が、銀色のワゴンを押して病室に巡回している。
「ちょっとあっちに行こう」
 ナースステーション方面の案内図と一緒に談話室がある。
 二人は談話室に向かった。
 談話室には開放感あふれる照明と陽の光があたり、窓は換気のために少し開けられている。
 少し強い風なのかベージュ色のカーテンや観葉植物が遊ばれている。
 
 4人がけの丸机がいくつもあるがまばらだ。
 水色のボトムスとトップスを着ている人や、キャラクターもののパジャマを着ている人など。水色の方は病院の売店で販売されているものだ。
 退屈しのぎ用に壁に埋め込みされたテレビが字幕付きでついているが、真剣に見ている人は少ない。スマホとにらめっこしている人、読書する人、近い席で患者同士談笑する人など、談話室内の自動販売機の前でどれにしようかなーと悩んでいる人などがいる。
 陽鞠と陽貴は談話室の入り口手前に座った。
 幸い周りに誰もいない。
「陽鞠ちゃん、お母さんと離れて暫くうちから学校通わない?」
 陽貴は身を乗り出して声を潜めて尋ねた。
 陽鞠は目を丸くして「は、はい……」と返事する。

< 135 / 928 >

この作品をシェア

pagetop