世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 強く言われた上、妻の母が出てきたので、押しに負けてしまった。
 実家の母はすぐに回復して、今でも元気に働いているが、高齢なので、父と一緒に勤務時間を午前中だけにしている。
 本人達はもっと働きたいと口を尖らせているが、健康のことを考えてだ。
 空いた時間には2人で近所のおばさん達とヨガに通ったり、山歩きに行ったりとアクティブになっている。
「あれはホントないわー」
 コーヒーを一口つけて呟く。
 自分が病院に運ばれた日にすぐに来ず、兄と娘に連れられて来たのと退院の日だけ。
 兄夫婦と娘は合間縫ってお見舞いに来てくれたが。
 しかも妻が来ても一方的な要求しかしてこなかったので、正直疲れた。
 同じ病室のおじちゃんたちからは「なんか大変そうだけど、頑張れよな」とか「おたくの奥さん? メチャクチャなことデカイ声で言ってるから、丸聞こえだよ。あんなの病人に対するセリフかよ」とか遠回しにうるさいと言われた。
 すみませんすみませんと謝ったら、彼らは「俺たちが証人になるからよ!」と調子よく返してくれた。
 さて、これからどうしようかと考える。
 まず兄夫婦が午前中に来る。娘は学校に頑張って通うと。あと3日で終業式で冬休み入るからと。
「なんか落ち着かないな」
 思わず呟いた。
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