世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「お義母さんが仕事中に転倒したんだって。だから今から病院きてってさ」
「あらそうなの? 大変ねー」
 周子は棒読み口調で、心配しているそぶりを見せる。
 うちの可愛い娘を、よその母親の病院の付き添いに連れて行くなんてと曇りがちの顔になる。
 本当は行きたくない。義理の親なんてどうでもいいし、興味ない。むしろ存在がムカつく。
 このままとっととあの世に行ってくれればいいのに。ついでに義理の父も道連れにしてくれ。
「結花ちゃんちょっとおいで」
 周子は結花を隣の席に座るように手招きして、耳打ちをした。
 いたずらっぽく笑う周子と口角をあげてニンマリする結花。
 宝物を見つけたかのような子どもだった。
「……わかったわ。そうする。今日のアフタヌーンティーはまた今度ね」
 結花はじゃあねと待ち合わせ場所にタクシーで向かった。
 お嬢様育ちという名の甘ったれな結花には、自分で車運転したり、公共交通機関を使うという選択肢は存在しない。
 頭の中ではアフタヌーンティー邪魔したから〆てやると自分への利益だけだった。
 義理の母の心配する気なんて微塵もない。
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