世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 そそくさと立ち上がって応対すると、画面に写ってる人を見て舌打ちをした。
 くっそ、あいついるじゃん。嫁が。連れてくるなよ。
 2人っきりでお話しよって思ってたのに。
 のそのそと玄関ドアを開けて「待ってたのぉ」と陽貴だけ挨拶をして、そっと手を握るが振り払われた。
 隣にいる千雪《ちゆき》は結花の態度に唖然として声が出ない。黙って見てるだけ。その視線は突き刺さるようなものだが、結花は気づいていない。
「ゆいちゃん、はるくんに会いたかったのぉ。さぁ、あがって。そこの人も一緒?」
 陽貴は「ええ、同席してもらおうと」と告げて、家の中に入る。
 結花はスリッパをすぐに用意するが、陽貴の分だけだった。
「あ、あの……」
 私の分はと千雪が言いかけたが、結花はリビングに向かっていたので姿が見えない。
「千雪、これ履いて。俺は適当に取るから」
 陽貴は結花に渡された分を妻に変えて、玄関から適当に取った。
 うわぁ、こんな陰湿なことやってくれるのか。
 お手伝いの柿本さんの言ってた意味がわかる。
 メンタルが女子中学生。確かにそうだ。
 この段階で怒りポイントが出ていたが、呼吸を整えて、妻の手を握りながら一緒にリビングに向かう。
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