世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「だって……私が跡継ぎなのに! なんであんたがなったの?! そんな関わっても、実家帰ってもないくせに! お母さんは私が跡継ぎって約束したの!」
『……あのなぁ。そのキャンキャン喚く喋り方いい加減直せよ。お前もう40前だろ? 精神年齢は中学生レベルってか? 同じ中学生の陽鞠ちゃんのほうがよっぽど落ち着いてる』
 良輔の大袈裟なため息と娘を引き合いにされたのか、結花は彼の弱みないか思い出す。
「子どもいないあんたとこに何が分かるの?! あんたが厳しいから子ども出ていったんじゃない?」
 ニンマリと口角をあげてしてやったぜとガッツポーズする。
 良輔の長男は中学卒業を機に、バレーボールのスポーツ推薦で遠方の高校に入った。授業以外は部活に明け暮れているので、学校の敷地内にある寮で生活している。
 実家に帰れるのは年末年始だけだ。
 長男曰く、先輩や顧問達の地雷を踏まないように、暗黙の了解を覚えるのが大変だと。
「やっぱりそうなのよ。りょう兄昔から真面目だもんねーぇ。全然面白くない。まぁ、それ言ったらしずねえも真面目だし。私に隙付かれて彼氏取られたもんねぇ」
『今はそれ関係ないだろ。話を逸らすな。お前がやってるのは会話じゃなくて脅し。相手の弱みばかりついてる陰険な人だ。これ以上通用しない』
< 243 / 928 >

この作品をシェア

pagetop