世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「はー、そうなのね。そうだ、いいとこ紹介しようか? 私の名前出せば安くなるし」
「いや、今行ってるとこが気に入ってるんで大丈夫です」
 多分いいところなんだろうけど、紹介されても高いだろうなぁと暗澹した気持ちになる。
 持ち場に戻ってきた後、結花は「相川くーん、品だし? 一緒について行っていい?」と声をかける。
「いや、相川さんは太刀川さんと一緒に行ってもらいます。私達は、他の仕事をします。ここの掃除と段ボールの整理整頓です」
 結花は口先をとがらせて「えー、相川くんとこにいきたーい」とごねる。
「また別の機会にやるので。今日は私と一緒ですから!」
 相川が狙われるのも時間の問題だ。
 彼が来るのは明日と明後日。新学期始まったら顔を合わせる機会はなくなるだろう。
 あの感じだと、若い男性スタッフ達が餌食になりそうだ。
 シフトをよく考えないとまずいかもしれない。
「ね、ゆいちゃん、私と一緒にやりましょ。かっこいい福島さんもいらっしゃるし」
 塩浦になだめられてしぶしぶ2人で開封した段ボールをまとめていく。
「そろそろ多くなりましたので、捨てに行きましょう」
 段ボールはたたんでカートに置いていくきまりだ。
 まとまったら、外のゴミ捨て場に持って行く。
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