世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 外は1月の冷たい風が結花達の体にたたきつける。
「寒いじゃん!」
 朝なのに。日が出ているのにこんな寒いとは。
 たかがダンボール捨てるのになんで寒空の下で外に行かないとだめなの?!
 早く店の中に戻りたい! 去年の今頃はこたつでぬくぬくと過ごしてねていたのに!
 福島と塩浦からゴミの捨て方と掃除を教わった。
「ねー! お嬢様に汚れ仕事させるつもり!? このネイルお金かかってるのよ! 白魚のような手が台無しよーっ!」
 これ見よがしに両手をみせる。
 赤を基調にあちこち蝶々のガラスが貼られている。しかも爪は長い。
 結花は高校時代から毎月1回ネイルサロンに通っている。
 学校の先生からネイル禁止を再三言われているにも関わらず守る気が一切なかった。
 担任や生徒指導の先生達が言おうものなら、母の周子が学校に口出しの上、お金積んで黙らせようとするので、最終的に先生達は何も言わなくなった。いや、諦めたが正しい。
「まー、凄いね! おしゃれ! どこでしてるの?」
「近所のサロンです」
 塩浦はしげしげと眺めていいなー、福島さんも見てと呟く。
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