世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「ええ。ごみ捨てなんか、呉松家のお嬢様に汚れ仕事させるなんて酷いって言ってました。どこがお嬢様なんですかね? 成金の間違いでしょ? だいたい呉松家って何ですか?」
 野崎は結花の実家について説明すると、呆れたようにため息をついた。
「そうなんですね。私はこの辺の人ではなかったので、全然知りませんでした。バカバカしい」
 吐き捨てる福島に野崎は目を丸くする。
 いつもにこにこしていて、あんまり人前で怒るタイプではない彼女だが、バックヤードではちょいちょいきつい言い方になる。でもそれは店長である野崎の前だけだ。
「あれ、あのままだと勤務の士気やお客様からクレーム来るのも時間の問題だと思います。はっきりいってらここで働かなくてもいいのでは? そんなに働きたくないのなら。あのおばちゃん達も少し甘やかしてる所ありましたから……ゆいちゃんって呼んじゃってるから」
 甘やかしてるという単語に野崎は「業務ノート読んでないのかな」とボヤく。
「甘やかすなって言ったんだけどねー。相川くんはどう?」
「狙われてますね。本人は物凄い嫌そうにしてましたし、挨拶も最低限になってますね。恐らく彼女のことが苦手なんでしょう」
 相川は結花が話しかけても距離を取る上に、淡々と返していた。
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