世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「やっほー、早くやろっ! 今日は何するのー?」
 相川の背後から結花は声をかける。
 いきなりのことなので相川は驚きのあまり腰を抜かす。
「び、びっくりしました。き、距離が近いですよー!」
 すかさずゆっくり距離を取ろうとする相川だが、結花はねぇねぇとボディータッチをする。
 相川の顔色がだんだん白くなっていく。呼吸も荒くなる。
 春日か太刀川のおばちゃんでもいいから、早く来てくれ!
 少し座り込んで呼吸を整える中「あ、相川くん……ん? 大丈夫?!」と声が聞こえた。
 結花が振り向くとベビーフェイスの華奢な女性がいた――春日だ。
「あー、相川くん、ちょっとしんどそうねー。どうした?」
 春日は慌てて相川に駆け寄り結花に「何があったんですかー」とのんびりした口調で尋ねる。
「な、なんでもないです……気にしないでください」と相川はゆっくり立ち上がる。
「わ、私悪くないもん! ちょーっと、話しかけたらこれよ?! あんた、距離近いじゃん! なに、彼女気取り?!」
 春日がさりげなく相川の背中をさするのが気に入らないのか、結花はヒステリックな声で詰め寄る。
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