世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 高校生とはいえ、先輩である春日にあんた呼びする結花はこれが通常運転である。自分が下だと思った人間には名字で呼ばずあんたかお前呼ばわりだ。主なターゲットは同性。
 春日は声を潜めて
「――太刀川さん、今日私と袋詰めのペアでしたが、交代してくれますか? 相川くんと交代してくれませんか? 私と依田さんでやります」
「どうしてー……? あ、そういうことね」
 春日の意図が一瞬分からなかったが、すぐに理解出来た。
 相川が結花のことを苦手に思っているからだ。
 結花が絡もうとしたら、すぐに距離をとる。それはここでの作業も同じだ。
 店長から極力相川と結花を一緒にさせないように強く言われているが、この1ヶ月でなんとなく理由が分かった気がする。
 それは他のメンバーも気づいている。だから、結花に分からないように相川と離れさせようと試行錯誤している。
「分かったわ。そうしよう。一人だとちょっと時間かかるけど、それは仕方ないわ。もし早く終わったら、こっちもお願い」
「分かりました」
 それぞれ持ち場に戻り、春日は結花が収穫用のコンテナに座って菓子パンを食べている姿に呆れていた。
「依田さん、作業はどうしたんですか?!」
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