世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「あのさー、今、野崎店長がお話してる最中じゃん? メモ取らないの? それとも記憶力自慢系? じゃぁ、さっき言った内容、一語一句間違えずに言える?」
 業務連絡? 何それ。あのハゲの話なんてどうでもいいんだけど。それより私はあなたの個人的な連絡先とか、好きなタイプ聞きたいんだけど! 
 下にうつむいてメモ帳を開く。
 スタッフの名前やプロフィールがメモされている。
 彼女や妻子の有無、好きなタイプや家族構成、職業など、見た目を100点満点で評価しているもの、業務に一切関係ないことばかりだ。
 ペラペラとページをめくって、思い出す限り書き留めるが、出てこない。
 尾澤は結花のところにやってきて「ちょっと見せてくれるかーい?」とメモ帳を取り上げる。
 内容を見て尾澤は「……後でお話あるから。名前は? 依田結花さんね!」と呟いた。
 距離が近い! いやー、声がいいから心臓跳ね上がる! 顔近づけて!
「依田さん、じゃ朝礼終わったらね。野崎店長は今、今日のタイムセールの商品を話しているから、なにが目玉か忘れずに書いてね」
「は、はい……」
 強く怒られるかと思ったら軽いノリ言われたものだから、結花は呆気にとられる。
 尾澤の一声で結花は言われた通りのことをメモした。
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