世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
朝礼終了後、農産スタッフ部門に尾澤がやってきた。
「では改めて――私、尾澤万希とと申します。初めての人もお久しぶりの方もよろしくお願いします!」
ばちばちと拍手する中でおばちゃん3人衆の1人、太刀川が「懐かしいわー。相変わらずカッコイイ」とアイドルに声援を送る人になっていた。
「おっ、裕美ちゃん、お久しぶりー! 元気? あとで話聞かせてー! あとはえっと……安田さんだだけ。で、あなたが依田結花さんね。よろしく!」
名前を呼ばれた人達は殆ど面識がないのにも関わらず目を丸くしていた。それもそうだ。尾澤は出勤1時間前に来て、スタッフの名前と顔を叩き込んでいた。
彼女は人の名前と顔を覚えるのが非常に速いタイプだ。
「ここの部門のリーダーである福島さんの代わりに来てます。えっと、とりあえず、持ち場に入って……とちょっとひろちゃん来てくれるかな?」
結花は今日、安田とペアを組んでほうれん草の袋詰めする。結花の信者なので少し機嫌がいい。
結花は商品をダメにした《《前科》》があるので、袋詰め梱包の作業だけとなった。
「あちらの女性が依田社長の奥さん?」
尾澤は作業している結花を一瞥した。