世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「随分しつこく連絡先聞いてきたり、さりげなくボディタッチしてるからねー。一緒に仕事やりたがるから、私たちで引き離してたんだけど、隙をついては、彼に絡んでたの。あんまりにも執拗いから、それで怒っちゃって……とうとう依田さんのこと痛い《《おばさん》》って言っちゃってね」
 尾澤の顔が引きつる。
「あー……言っちゃったか……痛い《《おばさん》》、ね……」
 彼女のメモしたノートを思い出す。
 業務に関係ない事柄ばかりで、男性スタッフをて見た目だ財力だと品定めするかのように記録されていた。
 仕事を本当に覚える気があるとは言えば、甚だ疑問である。
 結花の事情は人事部長の陽貴と社長の悠真から一通り聞いている。
 あー、あの問題児ねとすぐに出てきた。
 尾澤の実家と呉松家《くれまつけ》とは仕事で付き合いがあり、何度か彼女達の親同士が懇親会的な催しで顔を合わせている。
 尾澤の両親から聞いたのは結花の素行の悪さ。
 昔からトラブルメーカーとして有名で、母親が甘やかすことで余計拍車をかけている。
 いつも言っているのは、上2人はしっかりしてるのに、なぜ結花だけあそこまでわがままなのか。母親そっくりだと。父親がちがうのではと密かに噂されていた。
 尾澤と結花が直接会うのはこれが初めてだった。
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