世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「たまたまダメになったんだとしか思わない。なに? 《《悲しいと思ってる》》と答えさせたい? あいにく私はそういうのわからないのよねー」
 手をひらひらさせて、もうお説教はうるさい、帰ると作業台に戻ろうとするが、腕を掴まれた。
「……まだお話は済んでません」
「あら、呉松家のお嬢様の腕掴んでるなんて、良い度胸ね。私のこと好きなの? いやー、嬉しいー! ゆいちゃんの肌堪能してぇ。すっべすっべだから!」
 声のトーンが明るくなる結花に、尾澤は眉を顰める。
 なんなんだ、この人は。態度が変わりすぎだろ。
 なんかそういう気分変わる系の病気とか持ってるんじゃ……カウンセリング案件な気がする。
「話をそらさないで下さい。今はあなたの業務と態度についてお話してるんです。状況分かってますか?」
「勤務態度も業務も真面目にやってる! 太刀川のおばちゃんがいじわるしてくるのっ! 塩浦のおばちゃんも、相川くんもみーんな《《いじわる》》してくるの! ね、助けて!」
 上目遣いでアピールする結花に尾澤は大きくため息をついて、腕を振り払う。
「あのですね、皆さんいじわるしてるんじゃなくて、依田さんが出来るように声かけてるんです。あなたの話し方といい、今の態度といい、本当に呉松家のお嬢様ですか?」
< 337 / 928 >

この作品をシェア

pagetop