世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 良輔が追いかけるように結花のもとへやってくると「物置だ」と短く答えた。
「なんでよ? ここはゆいちゃんの部屋よ! なんで物置にするの?! こんなくっらーい場所にして! 今すぐ元に戻して!」
「いつまで娘気分でいるんだ? お前は出戻りだ。しかも2回目の。お前の私物は全て捨てた。自分の立場わかってんのか? ここで今まで通りの生活出来ると思うなよ」
 結花の言い分を無視して、良輔は早くお父さんとこいくからと急かした。
 自分の部屋を一瞥してしぶしぶ兄についていく。

 ちょっと! なんなの! 私の部屋がこんなに変わって! ほんとこのクソ兄死んでくれないかなー。そしたら、ゆいちゃんが当主になれるのに。
 それでお母さんと一緒に住むの!
 その前にこの兄と下僕父を追い出さなきゃ。
 そうするためにはどうしよう? 

 父の明博(あきひろ)はリビングのソファに座ってテレビを見ていた。
 紺色のセーターに薄い青のズボン姿。
 髪はあるものの、あちこちに白髪ができていた。
 まだまだ働いているのか背筋が伸びている。

「お父さん、こいつ、またやらかしたから連れて帰った。しばらくいさせてやれないか」
 良輔の話に明博はテレビを消して、立ち上がり、結花のもとへ向かう。
 
 勢いよく結花の頬を叩く音が響いた。

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