世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 頬は赤くなり結花の目元からじわりと塩分を含んだ液体がはらりと落ちる。
 結花は言いたい言葉を探しながら、口を急速に動かそうとする。しかし、声が出ない。

「専業主婦なのに家のことせず、威張ってばっかで、家族のお金勝手に使って、挙げ句、向こうのお子さんの物を勝手に売って遊んでたそうだな。悠真(ゆうま)くんと陽鞠(ひまり)ちゃんと同じことしてるじゃないか。この年になっても学習能力がないみたいだな。呉松家でいくつになっても、トラブルメーカーがいると、良輔もお父さんもおちおち安心できん。身内の恥だ」
「な、なによ! 婿養子の癖に! 世界一可愛いゆいちゃんに対して、身内の恥なんて! ひどいよ! とっとと年金と遺産をゆいちゃんに渡して失せろ!」
「だ、だって、あいつの給料マジ安かったんだから、ゆいちゃん、生活出来なかったの! 何がわるいの?! みんな意地悪してくるもん。寂しいから友達とちょっと遊んでただけ」
 明博に対して早口でまくし立てるように結花は威嚇する。
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