世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 結花は浅沼響と自分の兄が会社間で繋がりあることを知らない。
 良輔が教えないように口止めさせている。
 教えたら教えたで、結花が特別待遇しろと言うのが
分かってること、彼女の分からない所で近況をやり取りすることで、心理的ダメージを与えられると考えてるから。

 結花のスマホの連絡先は15人登録されているが、最大20人まで。あと5人しか出来ない。
 部署内での連絡は専用のアプリを使うだけだが、あんまり機能していない。
 あんまり連絡先増やすと、本当に必要な人が出来なくなる。

「落合さん、そのまま無視して向かって下さい」
 小声ではいと落合は服部を一瞥して、台車を押した。
 覇気のない自信なさげな顔で。しかしそれが、服部の苛立ちをさらに増した。
 
 ――まるでバカにされてるみたいだ。ほんとどんくせー女。見てていらつく。

 結花の視線は台車に向けられた。
 あ、そうだ! 今のうちに落合に仕事奪っちゃぉ!
 今はしおらしく素直に聞いてるフリしなきゃ。

 社長室と営業部は少し離れているが近い。
 今から行けば間に合う? どうせ落合は歩き方トロイし。

 結花は分かりましたと、社長室に向かった。服部が人事部の中に入ったのを確認して。

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