世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
「目に入れても痛くないぐらいなんですね」
「当然ですよ。うちの主人もすっかり孫バカになっちゃって。次会うのが楽しみ」 
 
 てかあのオバさん、孫いたの?
 行き遅れのオバさんだと思ってたけど、そうでもないのね。
 
 結花は起き上がって、丸岡と浅沼の話に耳を傾けた。
 聞いているうちに、結花は下にうつむいた。
「呉松さんどうした?」
「あ、いや、孫か……って。私も、いつか娘に会えないかなって」

 いつ連絡しても無視される。最後に会ったのはいつ? そうだ、5年前。
 当時中2だった娘は大学生?
 今大学に行ってるどころか、安否すら教えてくれない。
 元夫の安否も知らない。
 知ってそうな父や兄に聞きたいけど、他人だからと捨てられ、音信不通に。
 そうだ、実家がもうないんだ。
 父と兄と姉とは血がつながってないから。
 実家にいれたのは、唯一血がつながってる母が存命していたから、呉松家の当主だったから。
 でも兄に代わってから、母の立場は弱くなり、最終的に追い出されるかのように、老人ホームで亡くなった。
 母が亡くなってからまるで、これ幸いと言わんばかりに私も追い出され、ここにいる。
 ここでも実家でももう居場所がないんだ。

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