世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 まるで品定めするかのように。
 稲本夫妻も悠真も、結花の非常識さに開いた口が塞がらなかった。

「ねぇ! お茶!」
 一通り見た結花は、リビングのソファーに座った。腕を組んで陽鞠に呼びかける。
「まだ生きてたんだ。てっきりホームレスになって野垂れ死んでるかと思ってた。何しに来たの? 早く帰って」
 陽鞠がやっと口にしたのは帰りのお願いだった。
「せっかく感動の親子と夫の再会というのに……っぐっ、しょ、しょうちゃん、この子冷たいよ? ゆいちゃん悲しい」
 泣き真似をして庄吾に視線を向ける。
 初対面でいきなりあだ名で呼ばれた庄吾は、やめてくれなんて言えなかった。

 この人は本当に妻の母――つまり俺の義母、なんだよな?
 いやいや、こんな人無理! 身内って認めたくない!
 ぶりっ子キャラとドラマで共演したことあるけど、そこまででもなかったし、あれは演技だ。
 ドラマのキャラのせいで演じた女優は、ネットでしばらく叩かれてたけど、本当はあんなキャラじゃない。かなりあっさりした人だ。
 
 しかも自分のこと名前で言ってる? 年齢分からないけど、さすがに痛すぎる。
 妻はこの人を母と認めてない。いや、認めたくないんだろう。存在をなかったことにしたいんだろう。
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