世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!
 稲本夫妻に比べ著名ではないし、SNSもやっていないが、悠真の名前を検索すれば、会社のホームページの役員一覧に載っている。
 その中にはどこの会社で働いて、どんな役職だったか、出身大学や趣味までも載っているので、それはそれでリスクが高い。
 
 社長の平井から先ほど連絡があった。

『大丈夫か? 琥珀くんと翡翠ちゃんの件。事態が終息するまで、陽鞠ちゃんのそばにいてやりな。家で仕事した方がいい。なーに、根回しは任せとけ。適当に腰痛で動けないことにしとくから。マスコミに居場所聞かれても、お答え出来ませんで通すから。2人は無事に決まってる。お前の孫だからな。なんか必要なものあれば届けるよ。じゃぁな!』

「平井さんが必要なものあれば届けるってさ。あるかい?」
 陽鞠と庄吾は顔を見合わせて「強いて言うなら、お父さんの服だね」と答えた。
「腰痛でいけないことになってるんですね。なんか妙にリアルですね」
「そうだね。たしかにお父さん、たまに腰痛いって言ってるし。年齢的にもあり得る話だし」
 陽鞠の声が少し明るくなった。
「た、確かに腰痛いなぁってあるけどさ。どっかの漫画家みたいに動けませんまでにはなってない。ちゃんと病院行ってるし、運動してるし!」

< 853 / 928 >

この作品をシェア

pagetop