僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
前でお弁当を食べている女子たちの視線が、いっせいに私に向けられる。

「え、夏生さん?」
「天宮くんの知り合いなの?」

そんな声がヒソヒソと聞こえた。

どことなく居心地の悪さを覚えながら、天宮くんのもとに行った。

私と目が合うと、天宮くんはまたサッと目を逸らした。

よかった、いつもの天宮くんだ。

女子に騒がれている彼を少し遠くに感じてしまったけど、ホッと胸を撫でおろす。

「プリンターが変わったから、部長が昼休みに操作のし方教えてくれるって。プリンター使う用事、すぐにあるだろ? 今から来れる?」

「うん、行けるよ」

プリンターを使う用事とは、高安くんに届ける写真をプリントアウトする作業のことだろう。

高安くんの家には、今まで三回写真を届けに行った。

そろそろまた行こうと思っていたから、プリンターの操作は知っておいた方がいい。

「時間かかるから、弁当持って来てだって」
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