僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
そう告げられ、私はいったんお弁当を取りに自分の机に戻る。

「夏生さんって写真部だったんだ」
「天宮くんも写真部なの? 知らなかった」

さっきの女子たちのヒソヒソ声が、また聞こえた。

私を待ってくれていた天宮くんについて行き、教室を離れる。

地獄のような昼休みの教室から抜け出したとたん、フッと体が軽くなった。

だいじょうぶと言い聞かせつつも、ひとりでお弁当を食べることが、どれほど自分に負担だったのかを思い知る。

写真部の部室に着くと、天宮くんが入り口近くにある電気のスイッチを押した。

明るくなった部屋には誰もいない。

「二階堂部長は?」

すると天宮くんが、気まずそうな顔をする。

「ごめん、本当は来ない」

「え? じゃあ、プリンターの操作は……」

「プリンターが変わったってのは本当なんだ。食べ終わったら僕が教えるよ。でも、そんな難しい操作じゃない。なんなら前より簡単だし」
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