僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
よく見たら、長机の上には、天宮くんのものらしいお弁当袋が置かれている。

彼も、これからここで食べるつもりなんだろう。

昼休みの居場所を作ってもらえた喜びよりも気恥ずかしさの方が勝って、私はいたたまれなくなった。

不登校だったことはもうバレてるけど、また友達関係をこじらせてるのを知られてしまった。

なんだかかっこ悪い、情けない、そして申し訳ない。

「なんか、ごめん……」

自分でも思いがけないほど、どんよりとした声が出た。

普通の高校生だったら、一緒につるむ友達なんて苦労もせずに見つけて、こうやって他人に気を遣わせたりしないはずなのに。

どこまでも役立たずで、親不孝で、世の中のはみ出し者。

不登校時代を経て染みついた自分の評価が、より色濃くなる。

だけど。

「自分を責めないで」

ふいに聞こえた力強い声に、うつむきかけていた顔を上げた。

――あ、また。
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