僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
澄んだ茶色い目が、怖いほど私を見つめている。

天宮くんにカメラマンモ―ドのまなざしを向けられたら、電流が流れたみたいに背筋が奮い立つ。

「夏生さんは、たくさん傷ついた分だけ、人の痛みに敏感になれるんだと思う。それはすごいことだ。誰にもできることじゃない。だから自分を責めないで」

飾りのない声が、まっすぐ胸を打った。

どんよりとした声を出したばかりの喉元が、かすかに震える。

天宮くんは今、どんなにうまくやろうとしても、うまくできない私の煮え切らない日々を肯定してくれた。

傷つくことで、得られることもある。

もちろん傷つかないにこしたことはないけど、マイナスを産むばかりじゃない。

回り回ってプラスに変えることもできる。

そんなふうに言われた気がして、ぶわっと目頭が熱くなった。

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