僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
そんな私の不器用さすら分かっているかのように、天宮くんは静かに見守ってくれていた。

それからパイプ椅子に座り、お弁当を食べながら、本棚から取り出した写真集をペラペラとめくる。

だんだん気持ちの落ち着いてきた私も、お弁当を食べることにした。

楽しげな生徒の喧騒が、遠く聞こえる昼休み。

旧校舎の忘れられたような場所にある、小さな写真部の部室で、天宮くんとふたりきりのお弁当。

恥ずかしくて、うれしくて、どこか甘酸っぱい不思議な時間だった。

窓の向こうには、目が冴えるような七月の水色の空。

パラパラと天宮くんが本をめくる音が、耳に心地いい。

この時間を、私はたぶん一生忘れないだろうと思った。

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