僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
首から一眼レフカメラをふたつも提げた佐方副部長が、二階堂部長のとなりで軽く会釈をした。

私もペコリと頭を下げて挨拶を返す。

ふたりの向かいにいる天宮くんと目が合った。

「おはよう、夏生さん」

「おはよう」

名指しで挨拶をされて、なぜか緊張した。

それもきっと、グレーのゆるっとしたTシャツに黒のボトムスという、天宮くんの見慣れない私服のせいだろう。

電車とバスを乗り継ぎ、目的の丘陵公園に向かう。

のどかな田舎にあるその丘陵公園は、十万株もの花々が園内に植えられていることで有名だ。

花畑だけでなく、果樹園や森林もあり、民宿のような宿泊施設まで併設されている。

丘からは見事な星空が見えて、天体観測場としても人気らしい。

園内に入ってすぐ、ひまわり畑が広がっていた。

圧倒されるほどの数の黄色の大輪の花が、真夏の青空の下、燦々と咲き誇っている。

「わ~、めっちゃすごいやん~! テンション上がるわ」
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