僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
親不孝にさらに磨きがかかってしまう。

「三分の一、と……」

カメラを構え、ひまわり畑を画面の下方三分の一に寄せる。

〝三分割法〟というこの技法は、高安くんに持っていく写真を撮っているとき、天宮くんから教わった。

被写体を画面の下三分の一に寄せることで、構図が安定して、写真の印象が整うらしい。

残りの三分の二は、真夏の澄んだ青空だ。

カシャッとスマホのシャッター音を響かせ、撮った写真を確認する。

うん、いいかんじだ。

この調子でこの合宿の間に、高安くんに持っていくとっておきの写真を撮ろう。

そう思いながら含み笑いをしていると、背後でシャッター音がした。

振り返った視界に飛び込んできたのは、こちらに向かってカメラを構えている天宮くん。

え?と拍子抜けしてしまった。

「天宮くん。今、私のこと撮った?」

「え、あ、うん」
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