僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
レストランでお昼ご飯を食べたあと、二階堂部長が水しぶきを撮影したいと言い出した。

そういうわけで私たちは、園内の端にある池エリアに向かう。

大きな池には鴨、小さな池には鯉が泳ぐそのエリアには、無人の餌販売所があって、自由に餌やりができるようになっていた。

箱に百円を入れて一袋を自分で取る、セルフの販売方式だ。

「ここの池の水、めずらしくきれいやな~! いい写真が撮れそう」

二階堂部長が、満足そうに池を覗き込んでいる。

人から餌をもらうことに慣れているのか、すぐに鯉たちが二階堂部長の方に寄って来て、しきりに口をパクパクさせていた。

「天宮、餌やってくれる? 鯉が餌に群がったら水が跳ねるやろ? それを撮りたいねん」

「え、僕がですか?」

「だって私も佐方も撮りたいもん。夏生さんも撮りたいよな? 天宮は今ポートレイトの練習中やから他のもんは撮らへんのやろ? さっき聞いてしまったんやけど」

何かを言いたげな目つきで、二階堂部長が天宮くんを見ている。

「……分かりました。買ってきます」
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