僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
天宮くんはしぶしぶといったふうに、二階堂部長から百円玉を受け取り、鯉の餌が売っている販売所に向かった。

だけど彼が買ってきた餌の袋を見て、二階堂部長が顔をしかめる。

「ちゃうちゃう、これ鴨の餌やん。鴨の餌は白の袋で、鯉の餌は茶色い袋って書いてあるで」

「あ、間違えました。替えてきます」

バツが悪そうに、餌の販売所に引き返す天宮くん。

「天宮、ときどき抜けてるところがあるんよな。突然ビッグマウスになったり、ぼけっとしてたり、ほんとつかめんやつ」

二階堂部長がおもしろそうに笑っている。

天宮くんが餌を買い直している間に、二階堂部長は、私に水しぶきの撮り方を教えてくれた。

「水しぶきを時間が止まったみたいに撮るときはな、シャッタースピード速めにするねん」

だけどシャッタースピードを速くしたら暗くなるから、ISO感度というものを上げる必要があるらしい。
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