僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
「ポートレイトを撮ってるのは、夏生ちゃんだけなんよ」

「そう、ですか……」

てっきり、ポートレイトのモデルはほかにもいて、私は三代目くらいなのかと思っていたから、二階堂部長のその言葉には驚いた。

ほんのりにやついている二階堂部長を見て、彼女が言いたいことに勘づく。

そしていたたまれなくなった。

こういう恋の冷やかしみたいなのには慣れてないうえに、中学校のときの告白事件のトラウマがある私は、二階堂部長を直視できなくなる。

ひとりの女子のポートレイトしか撮らないなんて、端から見たらそういうふうに感じるのかもしれない。

つまり、天宮くんが私を好きかように。

だけど私を撮るときの天宮くんの目を思い出したら、どうしてもそんなふうに思えない。

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