僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
いつもおどおどしているのが嘘のような、まっすぐなブレのないまなざし。

表面だけでなく内面をもカメラの中に閉じ込めようとする、ときに攻撃的にも見える視線。

私にはあの目は、恋なんてそんな生ぬるいものとは違う、もっとすごいものに思えた。

天宮くんはまだ高校生だけど、私の中では、どんな著名な写真家にも引けをとらない唯一無二のカメラマンだから。

私のすべてをとらえ、見透かすカメラマン。

そこに愛だの恋だのとかいう感情を絡めるのはひどく不釣り合いな気がする。

「それに夏生ちゃんにだけ人見知……いや、これは言わんとこ」

天宮部長は、まだニヤついている。

私は苦笑いで受け流すことしかできなかった。
< 126 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop