僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
食事のあと、二階堂部長が星空を撮りたいと言ってきて、丘陵公園内にある小高い芝生の丘まで四人で向かう。

二階堂部長はすっかり張り切っていて、三脚など準備も万端だったけど、外はあいにくの曇りだった。

広大な夜空には、星がひとつふたつ見えるか見えないかといったところ。

見晴らしはいいので、晴れの日にはさぞや見事な星空が見れただろう。

「あ~、なんてついてないねん。めっちゃ曇ってるやん」

二階堂部長が、丘になっている芝生で悔しそうに地団太を踏んでいる。

佐方副部長はと言うと、曇りでも構うことなくパシャパシャと空の写真を撮っていた。

「曇りは曇りで悪くないと思うんだけど」

「前から思ってたけど、佐方、そうとうな変人よな」

何も見えない夜空を撮りまくっている佐方副部長を、二階堂部長が白けた目で見ている。

「さっきまであんなに晴れてたのに。そのうちまた晴れませんかね」

私が言うと、「そやな。ちょっとだけ待ってみようか」と二階堂部長が芝生にゴロンと横になった。

「何も見えへんけど、こうやって外に寝そべるの、気持ちいいわ。夏生ちゃんと天宮もやったら?」
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