僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
星空が撮影できず落ち込んでいたはずの二階堂部長が、とたんに明るい声を出す。

続いて上がったのは、金色の花火。

火の粉が柳のように夜空を落ちていくと、今度は緑色の花火が弾ける。

――ドンッ! ドンッ! 

青、赤。

――ドドンッ! ドンッ! 

金、金。

二階堂部長が、背中を叩かれたみたいに起き上がった。

「こんなことしてる場合やないわ、これはシャッターチャンスや」

さっそく自分のカメラを調整し、夜空に向かって構える二階堂部長。 

その間も、花火は音を響かせながら次々と花開いていく。

曇り空推しの佐方副部長も、花火の撮影に没頭していた。

いつの間にか、夜風の音も、虫の声も消えていた。

――ドンッ! ドドンッ! 

あたりを揺るがす花火の音だけに、耳が支配される。

色鮮やかな光花が、墨をこぼしたみたいな真っ黒な夜空に散っては消えていく。
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