僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
「三人いないと廃部になるんでしょ? 天宮くんと、私と、高安くん。これでぎりぎりだね。新入部員が入ってくれたらいいね」

なぜか、うちの部は暗いというイメージが学校全体に定着しているみたい。

顧問の先生がやる気ないのと、旧校舎の忘れられたような場所に部室があるのが原因だろう。

私も、この学校に写真部があることすら知らなかったし。

「来年か……」

どこか遠くを見るような目をして、天宮くんが言う。

あ、また。

天宮くんはときどき、こういう寂しげな目をする。

おどおどした雰囲気とも、カメラを構えているときの真剣な雰囲気とも違う。

唐突に目の奥に浮かぶ寂寥は、いつも私の心に引っかかった。

なぜかそのとき、廊下に飾られた天宮くんの白黒の写真を思い出す。

あの写真だけじゃない。

部室にある天宮くんの写真も、すべて白黒だった。

天宮くんの写真には、まったく色がない。
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