僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
「写真は、僕の見ている世界を再現しようとしているだけ。写真で嘘はつきたくないから。本当は白黒加工がどんな色合いなのかすら分からないけど、この目で見ている世界には近くなってると思う」

何ともいえない衝撃が胸を貫き、言葉を失う。

だけど真実を知った今、これまでの違和感がパズルをはめ合わせるようにつながっていった。

赤信号なのに渡ろうとしたところ。

色の話をすると寂しそうな顔をするところ。

袋の色で分別された餌を間違えて買ってきたところ。

天宮くんの写真は、彼の生きる世界そのものだったんだ。

私も、気持ちが沈んでいるときに世界が灰色に見えることがある。

だけど本当に灰色一色ってわけではなくて、あくまでも心の中の世界という意味だ。

でも天宮くんにとっては、私の心の中の世界こそが現実なんだ……。

「……その病気、治らないの?」
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