僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
合宿から帰った翌日、私はお母さんと一緒にショッピングモールに行き、本屋で〝色辞典〟を買った。

「変わった本を買ったのね。写真部の影響?」

「まあ、そんなとこ」

お母さんは、私が写真部に入部したことも、合宿に参加したことも、もちろん知っている。

この頃の私の変化は、お母さんにとってかなりうれしいようだ。

家族以外の誰かと出かけることなんて、不登校になってから一度もなかったから。

期待のまなざしを少し鬱陶しく思いながらも、お母さんに今までのような嫌悪感は抱いていない自分に気づいた。

それはきっと、前ほど学校に息苦しさを感じていないからだろう。

クラスではぼっちだけど、今の私には、写真部っていう居場所がある。

役立たずで、親不孝で、世の中のはみ出し者の私でも、撮りたいと言ってくれる人がいる。
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