僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
八月に入ってすぐのその日、指定された駅に行くと、天宮くんはすでに来ていた。
黒いTシャツにデニムパンツというラフな格好だ。
首からは、見慣れた一眼レフカメラが提げられている。
私服姿の彼は、背も高いし、通り過ぎる女子の視線をちらちら集めていた。
「ごめん、変なことに付き合わせて」
「ううん、変なことなんかじゃないよ」
むしろ、頼られてうれしい。
向かったのは、その駅から三十分ほど電車に乗った場所にある海だった。
駅を出ると、真っ白な防波堤が延々と続いていた。
ぎらぎらとした太陽に、きらめく青い海。嗅ぎ慣れない潮の香りに包まれると、日常とは違う開放的な気分になった。
天宮くんは、海の色が知りたいのかな?
防波堤を歩く私を、天宮くんはパシャパシャとひたすら撮影していた。
今日も、絶賛ポートレイトの練習中のようだ。
真夏の太陽がコンクリートの防波堤を照りつけ、焼けるほどに熱い。
ザバンという波の音が、絶え間なく響いていた。
「ねえ、天宮くん。私はどの色を教えたらいいの?」
天宮くんは撮影してばかりで一向に話を持ちかけてくる気配がないので、しびれを切らして聞いてみる。
「ああ、ええと」
我に返ったように、天宮くんがようやくカメラを顔から離した。
「そうだな。まずは今日の空とか?」
「今日の空……」
黒いTシャツにデニムパンツというラフな格好だ。
首からは、見慣れた一眼レフカメラが提げられている。
私服姿の彼は、背も高いし、通り過ぎる女子の視線をちらちら集めていた。
「ごめん、変なことに付き合わせて」
「ううん、変なことなんかじゃないよ」
むしろ、頼られてうれしい。
向かったのは、その駅から三十分ほど電車に乗った場所にある海だった。
駅を出ると、真っ白な防波堤が延々と続いていた。
ぎらぎらとした太陽に、きらめく青い海。嗅ぎ慣れない潮の香りに包まれると、日常とは違う開放的な気分になった。
天宮くんは、海の色が知りたいのかな?
防波堤を歩く私を、天宮くんはパシャパシャとひたすら撮影していた。
今日も、絶賛ポートレイトの練習中のようだ。
真夏の太陽がコンクリートの防波堤を照りつけ、焼けるほどに熱い。
ザバンという波の音が、絶え間なく響いていた。
「ねえ、天宮くん。私はどの色を教えたらいいの?」
天宮くんは撮影してばかりで一向に話を持ちかけてくる気配がないので、しびれを切らして聞いてみる。
「ああ、ええと」
我に返ったように、天宮くんがようやくカメラを顔から離した。
「そうだな。まずは今日の空とか?」
「今日の空……」