僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
まったく自信を持てずに、天宮くんに目を向ける。

天宮くんは相変わらず、カメラを構えて私を撮っていた。

けれどわずかにほころんだ口元は、満足そうにも見える。

それなのに何も答えず執拗に私を撮り続けるものだから、困惑しかない。

「……伝わった?」

「うん、たぶん」

たぶんって、何?

やっぱり伝わらなかったんだ、と肩を落としてしまう。

すると天宮くんが、カメラ越しに笑った。

「でも、一生懸命考えている夏生さんを見るのがおもしろいから大丈夫」

「なにそれ」

合宿を経て前より距離が近づいたせいか、天宮くんは今日はよく微笑む気がする。

前までは、私を見るなりおどおどしていたり、目が合えばすぐに逸らされていたりしたのに。

自分の役割が果たせているのかはよく分からなかったけど、天宮くんの笑う顔が見られるのはうれしかった。

その後も、私はいろいろな色を天宮くんに伝える努力をした。
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