僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
海は、どこまでも深い透き通った色。

太陽は、ギラギラして燃えるような色。

月は、静かだけど存在感のあるきれいな色。

私が一生懸命考えた説明を、天宮くんはポートレイトの練習に没頭してつつ、ときどきうなづきながら聞いている。

これでは、色を教えに来たのかポートレイトの練習に付き合っているのか分からない。

それに、せっかく買った色辞典は何の役にも立たなかった。

まあいいか。

天宮くんに写真を撮られている瞬間が、私は相変わらず好きだから。

その後私たちは、防波堤を歩きながらいろいろな話をした。

これまでも天宮くんと話す機会はあったけれど、こんなに話したのは初めてかもしれない。

天宮くんには、過去に不登校だった私の秘密を話している。

それに天宮くんも、色覚障害という秘密を私に打ち明けてくれた。

だからだろうか。

以前にも増して、彼の隣が心地いい。
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