僕は花の色を知らないけれど、君の色は知っている
不登校時代、同じような暗黙のプレッシャーを、私も幾度となく向けられた。

――なんで学校に行けないの? 皆、当たり前のように行ってるのに。
――こんな当たり前のことで迷惑をかけないでほしい。

重いため息、白い目、あきらめの態度。

天宮くんの嘆きが、まるで自分のことのように胸をしめつける。

「だから撮った写真だけは、自分に正直でいたかったんだ」

天宮くんが白黒写真にこだわる理由が、はっきりと腑に落ちる。

ひとつは、誰もいない渡り廊下の写真。

ひとつは、誰もいない昇降口の写真。

ほとんど人の通らない、旧校舎にある写真部の部室の前にひっそりと掲示された天宮くんの写真には、彼の強い思いが込められていた。

人と同じ景色を見ることができない虚しさ。

それでも、そんな自分を誰かに認めてほしい、静かな欲望。
やっぱり、天宮くんはどこか私に似てる。
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